島が見えるよガーンバ、島が見えるよガーンバ♪

ということで「ガンバの冒険」。
最近輪をかけて懐古的になっております。
これも子どもの頃に見ていたアニメ。

内容は殆ど覚えてなくて、とにかくネズミたちが敵のイタチと戦う話としか記憶してなかったのですが、CSでたまたま再放送を何度か見てストーリーを大人の目で再確認。

話もろくに覚えてないのに、何が印象的だったかというと、

ノロイ(敵のイタチ)がめちゃくちゃコワイ!
(↑画像参照)

ということで、子供心にそれはほんとーに恐かった。
出崎監督の本領発揮か、とにかくノロイの描写がドラマチックなほどオソロシイ。特にエンディングの、希望があるのかないのかよくわからん歌のバックに描かれてるノロイと言ったらもう……。
主人公のネズミたちの造形が愛らしいのとは非常に対照的。
これを見て以来、軽いイタチ恐怖症になり、
一時期(今も?)フェレットがブームになってもてはやされたけど、どう見ても
ノロイじゃねーか
と思ってしまい、どうも距離を置いてしまいました(フェレット好きの人すみません)。

さてそんな不気味な敵に挑むガンバたちですが、今見てもやっぱりかわいらしい。でもなんでガクシャとボーボだけ裸なのだ?
私はイカサマが好きだったのだが(たいていどのアニメでもキザな役が好き)なぜ彼だけ髪が生えてんだろ。大人になるとどーでもいいことに気がつきますね。
舞台が日本だったことにも驚いた。どこか外国か架空の島の話かと思ってたのだ。富山敬さんの声も懐かしく(主人公ガンバは野沢雅子さん)、こたつにもぐりこんで見ていた子ども時代の自分を思い出しました。

ネズミたちのキャラクターもはっきりしていて、パターン通りの冒険ものですが、ディキシーランドジャズ(?)風BGMもさわやかで、こどもが見てワクワクできるアニメのお手本のようです。

ノロイが恐すぎること以外は……。
(それも計算のうちか。しかし私にとっては妖怪人間ベムより不気味だったのだよ)
冬の懐かしアニメ大会。
(いつも大会と言いつつワンシーズンに一作ぐらいしか見ていないのだが)

●じゃりン子チエ(1981)

〈まぁるいあらすじ〉
大阪の下町に住むチエちゃんと家族(with猫)、周囲の人たちとの人情溢れる日常日記。

・映画版は見たことなかったけど、監督が高畑さんで作画が大塚康生さんだったのですね(宮崎さんは?)知らなかった。しかしそうやって見るとテツがダイス船長に、気を抜くとチエちゃんがラナに見える。
アニメのことは良く知らないですが、これは監督が出崎さんだったり(ex:止め絵で雷ガラガラ!臨場感溢れるジュニア対小鉄)富野さんだったり(ex:身の上を嘆いて内面世界に閉じこもるチエちゃん)したらニュアンスが変わってただろうなぁ(←そんな作りになるわけないやろとは思うけど、ま、イメージで)。
原作の風味が最大限に生きています。
というか、そのまんま。

・声優陣に上方芸人がずらり。
テツの西川のりおは不動ですが(ここまでピッタリの声があろうか)、唄子啓助、阪神巨人、紳助竜介などなど。好きなキャラは百合根はん(お好み焼き屋)なのですが、声は芦屋雁之助だす。シブイ。おいしかるかる〜♪仁鶴師匠は花井先生役。いいですね。絶好のキャスティング。
声が目当てで見たので、堪能した。
なかでもジュニア=横山やすしが、どこまで舌回すねん、というほどロレツが回ってて痛快でした。さすがの説得力。

・たまに読み返したくなるチエちゃん、もうとっくに終わってるらしいですが最終回まで読んだことがない(20巻ぐらいまでしか)。でもすごいどんでん返しがあるわけでもないだろうし、ま読まなくてもいいか、という安心感を与えてくれるのがこのマンガの懐の深さのよーな気がします(勝手な言い分)。
秋の一人懐かしアニメ祭り。

●さよなら銀河鉄道999(1981)

〈そしてあらすじは大人になる〉
荒れた地球で機械と戦う鉄郎にメーテルからメッセージが届く、「999に乗りなさい」と。行き先不明の旅の最後に鉄郎が知った驚愕の真実とは。

・見たと思ってたのだが、見覚えがない。どれだけ話が進んでも覚えてない。アレ?見てなかったのかな?

・「さらば宇宙戦艦ヤマト」と同じで、物語の冒頭からノスタルジーの空気が肩にずっしりのしかかります。ノスタルジー砲発射!て感じ。
原作のイメージをいかんなく発揮しているという点では作者の意図に忠実かも知れないが、かわりにストーリー展開が雰囲気重視になってるのが残念。
モノローグが多くて、登場人物の会話が少ないのよねー。
メーテルと鉄郎の再会シーンでも情緒120%なんですが、ちょっとぐらいなんか話してもいいのでは。

・レジスタンスのおじいさんとかミャウダーとかも、鉄郎との関係をもうちょい掘り下げてくれたら親近感が持てたのに。ミャウダーて可愛い名前ですけど。
鉄郎もメーテルも動きが鈍くて、行動の端々に「?」なところあり。

・しかし!
エンディング、あの主題歌が流れ出した途端、襟首をひっつかまれてガーンと過去に放り込まれたような気になりました。そうだ、私はこれを確かに映画館で観た…!この歌…。
そこでまんまと全身セピア色になりました。う、動けない、ノスタルジー化ガス雲に包まれて…。

・いやーさすが松本零士のノスタルジー力たるや凄まじい威力、あなどってはいけません。
話としては前の映画のほうが好きですが(主題歌ゴダイゴだし!)、これはこれで。「宇宙の車窓から」という趣でした。なんとなく。

・ハーロック、昔は気にならなかったけどめちゃめちゃドクロをフィーチャーした服装ですね。派手やなあ。メタルメナのお腹と足の甲にメーターがついてる造形が、松本漫画らしくていい。メーターですよ、やっぱり。

・黒騎士の声が江守徹だったのに一番驚きました。なんで?

半落ち

2005年3月7日 日本もの
●半落ち(2004)

〈あらすじザボン〉
優秀な刑事だった梶が妻を殺して出頭。警察と検察の駆け引き、スクープを狙う記者、悩める裁判官の思惑が梶の心境と交錯する。司法で裁けない人間の心のドラマ。

・わりと良かった。
淡々とした中の抑えた演技、梶を巡る様々な立場の人々の話に引き込まれます。派手さはない分、皆さん芸達者だし自然に物語に入っていける。

・んが、どうもいつの間にかポイントが切り替わって、みんなを乗せて別の線路を走って行ってしまったような印象。梶が内心を明かし出すまではタイトルの「半落ち」という言葉に沿った運びで、容疑者を取り巻く各組織の対立や取引の構造が面白かったのですが。
後半、せっかく地ならしした設定が上滑っているような感じがする。その結論では半落ちでも完落ちでも関係ないよーな気が。梶の苦悩はわかるけれども、彼自身についてはなんだかちょっと不透明。
空白の二日間にも首を傾げる。

・組織内/外関係や、弁護士・記者などの描かれ方がリアルで魅力的なので、ヒューマンなエンディングによけい物足りなさを感じたのかも。いや、それでいいんだけど、どーももったいない感が払拭できないのだなあ。

・多分導入部でわくわくし過ぎたせいか。この現象は「壬生義士伝」の時と似てる。最初盛り上がると(自分の中で)後半私立ボム(←何この変換。お色気SF学園ドラマか)じゃなくて尻つぼむ。
何にときめいたかというと、伊原検事の三つ揃い姿にです。すみません。
かっこいいですねぇ。やはり出来る男(の役)はスリーピース着用なのですよ。
それに比べて弁護士さんのスーツはいなせすぎないでしょうか。参った。

・寺尾さんを見ればルビーの指輪のイントロが頭をよぎり、柴田さんを見ればポッカコーヒーが浮かび…記憶を更新しなければ。

・全ての人がそれぞれの事情を抱えてるという設定の深い部分は、原作の方で更に楽しめるのかな。ということを期待して今度原作を読んでみよう。

・冗談みたいな直太朗ボイスにちょっと馴染めない私ですが、この歌は映画に良く合ってるような気がします。
シュレック2を見て懐かしくなったので。

●長靴をはいた猫(1969)

〈あらすじチュー〉
長靴をはいた猫ペロと不遇な少年ピエールが、力を合わせて魔王からお姫様を奪回する痛快活劇アニメ。

・♪びっくりしたニャ、びっくりしたニャー!
という曲がたまーに頭をよぎることがあります。最初にこの映画を見たのは小学生の時。ずいぶん時が流れましたが印象に強く残ってたんですねー。しかしネズミバージョンの『びっくりしたチュー』もあったとは記憶になかった。
久しぶりに見てペロの声が思った以上におじさんだったのが意外でしたが、やっぱりカワイイー。
カワイイなぁ。いやーカワイイ…。
これ以外の感想は特にありませんが、この時代のアニメには単純なはつらつさがあって自然とワクワクします。

・洋風なんだけどペロはなんだか三度笠が似合うキャラ。次郎長親分みたい。魔王はヨミ色してるくせに恐ろしくマヌケ顔だし、よく見てみればみんな無理があるキャラクターなんだけど、けどホラ、可愛いから。
後半の城バトルのアイディアは宮崎駿なんだそうです。そんな感じだー。城の構造もいいし、シーンの繋がりのテンポも楽しい。よっ城名人。

・タイトルの「猫」という文字が、猫の絵になってるところも腹立つほどカワイイ。声の出演に水森亜土も泣ける。

・可愛いだけじゃなくて、ペロは「ニヤリ」が似合う猫なのだ。ここは非常に重要なポイント。
私のニヤリ好きは幼少の頃すでに培われていたのね。
●チルソクの夏(2003)

〈あらすじは港町〉
1977年。親善陸上競技会で出会った韓国人青年と恋に落ちた郁子。一年後の再会を約束し、文通で交流を深めていく。郁子と友人達の素朴でピュアな青春物語。

・また。またノスタルジーものを手に取ってしまった。避けては通れぬのかセピア色の道。

・韓国と日本の問題を絡めてはいますが、非常にオーソドックスな作りなので展開が分かり易く、登場人物も純真な少年少女ばかりなので心静かに鑑賞することができます。24で荒んだ心を恥じるほどです。陸上がモチーフなせいか、青春の爽やかな(ほんとは臭い)汗と思春期独特の油分がリアルに伝わってきました。監督のノスタルジーはその辺りなんでしょうかね。

・安君(相手の青年)の熱意にはほだされるねー。boy meets girlの世界だと言葉は後からついてくる。なんだか起伏のない韓流ドラマみたい。つまり突然事故に会ったり兄妹だったりする突飛な設定を取り除いて、ドリーミングな部分だけを残したという感じです。

・ジョージ山本はどうだろう。流しなのもどうだろう。どう見ても本人にしか見えないので、このお父さんのヒストリーなんかをつい想像してしまい横道に逸れてしまうんですが。ゲスト出演感たっぷり。

・ラストも甘ーい。青春の思い出に浸るだけでは物足りない!という欲求を叶えてくれるところが今風かも。
しかし彼は彼女が来るのを見計らって歌を口ずさんだんじゃないのか…とエンディングでつい邪推してしまったので、私はまだまだセピア人としては未熟だと反省した次第でございます。
●みんなのいえ(2001)

〈あらすじ地鎮祭〉
売れっ子脚本家の直介と民子夫婦が家を建てることに。しかし設計者の有能デザイナーと大工である民子の父がことごとく衝突、無事に完成するのか?

・思えば「新選組!」がピークだったかも知れない、私の三谷さん病。良くも悪くも最近ではメディアに露出しすぎてて、腹八分目ぐらいになってきた。(ファンでいるのを)この辺で止めておくのが吉か。しかしそういうのって自制するものか。

・面白かったのは、義父とデザイナーの関係に意味もなく嫉妬する直介のエピソード。これを頭の中で三谷さん本人に置き換えて見てみると「イラシイ」(=イライラ+オカシイ)度が上がります。
それから確信犯的にいじられている田中邦衛か。邦衛が邦衛のセルフパロディを。木訥な黒板五郎からフットワークが軽い「あなたの隣の黒板五郎」にイメチェン、親近感を抱かせる。今ならつむじもどこにあるかわかるし。三谷さんも監督冥利でしょう。

・良くも悪くもフジテレビ色。
それってみんなが染まりたい色?

・突然ですが今年の抱負。

昨年は一つの映画に関して:
出来るだけ思い付いたことを箇条書きし、その上で考えをまとめる作業を行ってきた(つもりです)が、今年は全体的な感想の中からメインアイディアのみを抽出して、簡潔に意図を述べる努力をしたいと思いまーす。

と書いておかないと忘れるので書き残しとく。
なにもかもがみな懐かしい…(滂沱)。

冬の一人(懐かし)アニメ祭り。

●さらば宇宙戦艦ヤマト(1978)

〈あらすじ宇宙病〉
地球に不気味に近づく白色彗星。破滅の危機を救うのは廃艦寸前のヤマトしかない。使命に燃えるクルー達は再び大宇宙に飛び立つ。

・この昔の大ヒットアニメ、なんと言っても印象深いのは白色彗星のテーマ音楽です。パイプオルガンのやつ。あれにはキョーレツなインパクトがあった。
友達とピアノで弾いて白色彗星ごっこ(?)をしたものです。

・改めて見ると、この当時当たり前だと思ってたけど、ヤマトの乗組員が全員日本人だというのに時代を感じた。ハードが大和だからおかしくないけど、昨今のSFだと国籍が曖昧な人たちが活躍することが多いから、かえって新鮮だったり。そういう無邪気さは今の時代無くなりましたね…。

・それと合わせてこの物語の展開には色々と考えさせられる。
良いとか悪いとかじゃなくて、ひとことで言うと今の時代からすれば「古い」んですが、そうかといって自己犠牲に美しさを見いだすマインドが消失したかというとそうでもないし、むしろ廃れることがないフォーマットとして受け継がれて行くのだろうなぁ。しかしここまで美化されることはもうなさそう。

・トータルで見るとちょっと(かなり)長い。もう少しコンパクトにまとまってたら見やすいのに。
とにかく前のシリーズに対するノスタルジーから始まって、全編そのムードが貫かれてるから、さすがにノスタルジー愛好家の私にもちょっと辛い。見終わると全身セピア色になります。
死んだと思わせといて生き返ったりする強引な劇場版ヤマトシリーズですが、私の中ではこれで終わり。さらばヤマト。

・蛇足。時々デスラー総統に妙な色気があるのは、絵コンテが安彦良和氏だから?そういうのって関係あり?

・今年のノスタルジーはこれで打ち止め。

・皆様よいお年を。
12月はまずこれから。さい先が良い一本。

●ハウルの動く城(2004)

〈あらすじのドア〉
魔法と鋼鉄の国。呪いをかけられ老婆になったソフィーが向かったのは無邪気な魔法使いハウルのお城でした。

【多少ネタバレ気味です】

・インパクトがあった点を挙げてみます:

・城の足が速い!ものすごいシャキシャキ歩いている。イメージではもっとのったりした感じだったので、シャープな動きにびっくり。
でもあの城はいいですねー!宮崎さんの中では城が主人公なんだろうなぁ。

・キャラクターの目の大きさが通常より2割…いや3割ぐらい大きい。
のでキラキラ感がアップしてました。従来のシンプルな造形の方が好きなんだけどな…個人的には。なんでだろ、外国ものだからか昨今の流行を反映してか。おかげでハウルは今風にかっこよかったですが。
後半ソフィーが大粒の涙をこぼすところ、ちょっと大ちゃん(@いなかっぺ大将…)並ではなかったですか。涙の大きさに驚いた。

・声とキャラクターがぴったり。音楽も効果的。
予想通りハウルも良かったし、ゴーイングマイウェイのソフィーも雰囲気に合ってたし、どうしていつも久石さんの音楽には外れがないのか文句をつけたくなるほど文句なし。

・とまあ色々な点で楽しめましたが、何より見終わった後に気分がすっきりするところが良かったです。

・ソフィーの外見の変化が気持ちのバロメーターになってるのが面白かった。しかし彼女はいつハウルがそんなに好きになったのだ。一目惚れ?だよねぇ…。

・反戦風味ボーイミーツガール。
私のイメージでは、これまで宮崎アニメには確かに反権力的なメッセージが込められてきたけれど、こんなにストレートに「戦争、ダメ!」って感じではなかったような気がするのですが。それと同時にこんなに分かり易いラブストーリーも。そうでもないか?
メッセージのないファンタジーには意味がないので別にそれで違和感はないですが、えらく分かり易くなったなぁと思った。
ソフィーのまっすぐな気持ちも、ハウルの変貌ぶりもややこしくなくて分かり易い。はっきりと伝えることが大事ということでしょうか。共感。
思ったことははっきりと!当座の私の標語にしよう。

・大きな力を持てあました子どものままのハウルと、自分に正直なソフィー。くすぐられる組み合わせです。
映画館を見渡すと、冬ソナ世代と思われるご婦人方がけっこうおられた。帰りしな、ほぅ…なんてため息をついてた方々も。ピュアなラブを見分ける皆さんの嗅覚に脱帽。

・そんなにあっさり止められる戦争って一体何が原因だったのだろうとか、この国の仕組みはとか、結局カルシファーって何だとかおぼろげにもクエスチョンがわいてくるのですが、カブの正体ですべてが吹っ飛びました。ここが一番衝撃だったかも知れん。
まさかの基本的展開。これは童話ですからね〜、と釘を刺された気がしました。逆に現実に返ったような。
だからあれこれ憶測するのはやめ。野暮。
Happily lived ever after…なので、これですっきり良かった良かった。

・しかも私の場合、見終わって1時間後、2時間後…とじわじわと余韻が押し寄せてきて、今すごくハッピーな気分。前向きな気持ち。(弱ってたらしい)
いいタイミングで見られてヨカッタ!

悪霊島

2004年11月9日 日本もの
●悪霊島(1981)

〈あらすじアイランド〉
1969年。瀬戸内海に浮かぶ刑部島で起きた陰惨な事件。金田一耕助の推理が冴える。

【ネタバレしとるかも知れんのう】

・ヌエの鳴く夜は恐ろしい…ギャー!!

・ぎゃー!というテレビスポットが上映時流れてまして、子供心に非常にビビっていたのを覚えています。そのまま、観てはならぬほどコワイ映画とインプットされていたのですが、懐かしさもあって観てしまった。

・そしたら恐くない。あらら。大人になったせいか、昨今のホラーが恐すぎるせいか、いにしえ感が漂っているせいか。
でもこれはホラーじゃないですね。昔よくサスペンス劇場でやってた『京都・300年生きた美女』とかああいう悲しい情念もの。

・視点が定まらないので、なんだかドキュメンタリータッチ。ところどころ「?」な演出、紹介されてない人がいきなり話し出したり。冒頭の思わせぶりな古尾谷青年のモノローグは、あんまり劇中生きてない。のに関わらずエンディングで失われた青春ムードに着地するのは、ちょっと無理があるんじゃないのかなぁ。

・しかしキャストは楽しい!加賀丈Cの金田一耕助。キミ、その髪型レジャー用かね。チリチリすぎないか。そして石橋蓮司の女装。シリアスすぎてリアクションに困る。今の感覚で見るとつっこみどころが豊富。
中尾彬、室田日出男、伊丹十三、濃い男連中だ。反面、岩下志麻が人形のようにきれい。と思ったら監督は篠田さんだ。ええのう夫が映画監督だと。

・この事件、実は金田一さんがいなくても解決したんではなかろうか。岩下志麻の暴走と自爆で。金田一の視聴者に考える隙を与えないほど緻密な推理は面白かったけど。しかし警察の捜査はかなりアバウトだ。島のテンポに合わせているのか。

・良くも悪くも岩下志麻劇場だけど、島の情景や閉塞感がよく表現されていて、もの悲しいムードに拍車がかかっている。広島弁が良かったのう。瀬戸内海は好きなんよ。

・この映画、Let It Beが主題歌に使われてることで話題になりました。良い効果が出てると思います。

ピンポン

2004年11月8日 日本もの
●ピンポン(2002)

〈あらすじさん〉
ズンズンズンズンズンズンズンズンピンポンパポン。

・マンガの世界を実写化するには色々方法があると思いますが、いずれにせよ相当苦労がいるように思えます。この原作は読んだことはないのですが、映像を見ながらなんとなくマンガだとこういう風に表現されてるんだろうなーという絵が浮かんでくるマンガチックな演出なので、単にストーリーとキャラクターを借りてるだけの話ではなさそう。

・以前「バタアシ金魚」という映画を見たとき、私が好きだった原作のポップ感がうすーくなって、より「ミズミズシイ」感じになってたのがなんとなく肩透かしで、マンガ原作と映像のリンクはうまくいっても、持っている雰囲気を移植するのはなかなか難しいもんだと、以来思ってるのですが。
しかもその「雰囲気」も個人によって受け止め方が違うしね。なかなかタフな仕事だろうなぁ原作付きって。

・ペコが非常にマンガキャラなので、感情移入するとしたらスマイルなんだけど、この人なんか暗い…。ちょっと辛かった。もっと青春スカッと系だと思ってたら、わりと内面をフォーカスした繊細な話。意外とフォーク系か。基本的な枠組みは、ものすごくスポ根マンガの王道で特に目新しくないんだけど。
それに今どきの感性のセリフが乗っかっているのが若者魂を鷲掴みした。
のかどうかはわかりませんが、ああこれはマンガのコマの中でこそ生きるのでは…と思ったセリフがしばしばあった。あれだけ窪塚君がパペットっぽいのに、やっぱり生身の人間臭さは消しようがない。消さなくてもいいけどさ。

・中村獅童ですね!捨助。うまいなぁクセのある役。普通の役どころではどうなんだろう。クセ街道を歩んで欲しい。

・面白いような面白くないような、それは何かと尋ねたら〜♪というような話でした。原作を読んだらまた違う感想になるのかな?

・というよりもですね、こういうヤング層に人気の映画を観る場合、感性の若さを試されているような気がして、妙に緊張してしまうんです。
いいや独自路線で。いやほんとに。
←画像がないので、とりあえずこの映画の脚本家三谷さんの本を。
話の筋とは関係ありません。

●龍馬の妻とその夫と愛人(2002)

〈あらすじじゃきー〉
坂本龍馬の未亡人・おりょうを巡る男達の思惑とノスタルジーの物語。

・ちょうど大河ドラマで龍馬が暗殺されて、おりょうさん可哀想だなぁと思っていたので、続きのような感覚で観た。頭の中も幕末モードだったので良かったのですが。

・カメラがですね、常に遠いんです。
人物の顔がはっきりしないかわりに全体的な構図が見えて、自然なことは自然。大道具・小道具、緻密なセットや、自然光に見立てた照明を使って、とっても雰囲気が出てる。終始まるで箱庭を覗いているかのようで、面白いっちゃー面白いんだけど。

だけどさー、もうちょっとアップに撮って欲しかったなぁー!
人物がちょこちょこ出入りするのを観てると目がしばしばしてきて(照明もナチュラル過ぎて暗いし)、ついテレビを覗きこんでしまったではないか。
こういう撮り方のおかげで、クライマックスのノリさんシーンが盛り上がるんだけど、それにしたって皆さん遠かった…。家政婦の距離より遠いので、「見た」というより「見えた」って感じでした。目撃させてくれー。

・ストーリー的には、死んでしまっても影響力を持ち続ける人の生き方には憧れるけど、まわりに残されたものにとっては複雑なのだなー。と思ったりしたけど、物語性は実はあまり関係なくて、4人の立場から生じる掛け合いを楽しむ話かな。ノスタルジックコメディか。

・このオチはいいですねー。これはノリさんじゃないとオチないし、笑えない。引くぐらいのオチだもん。もし他の役者だったら真面目に憎める。あ、小日向さんだったら許せるかも。久しぶりに見た目が覚めるようなパンチラインだった。途中ほろりとさせて脱力へなへなーで見終わる、不思議な映画。
イメージとしてはクリオネ。

しかしやっぱり、もうちょっと近寄って欲しかった…。
●燃えよ剣(1990)

〈あらすじ散薬〉
新選組を組織し、乱世を駆け抜けた時代の申し子土方歳三と漢たちの物語。

・これはテレビ東京で年始に毎年放送している大型時代劇シリーズです。ビデオで出てるんですね。

・さてメインキャストは、土方→シャールウイ役所広司、近藤→わーかめスキスキ♪石立鉄男、沖田→はて?新人さんらしいです。この近藤は「燃えよ剣」の(私の)イメージになかなかフィット。とくに多摩時代なんて「何かとにかくビッグなことがしたくて激しくイライラしてる若者」をコミカルに演じてて、役所土方のグッドパートナーだと思いました。

・役所広司も熱演してて(頭大きいけど)、「とにかく突き進むぜ俺は」な土方ぶり。しかしどうも激しさばかりが先に立ち、もうちょっと落ち着けと言いたくなるようなキャラクターで、燃えよ剣の土方ってこんなんだったっけ。私のイメージでは見た目沈着で内面が荒れてる男なんだけど。総司総司とちとうるさいし。
しかし原作のエキスをぎゅっと凝縮するとこうなるのかも知れません。

・だってものすごい勢いで話が進むんだもの。とにかく詰め込めギュー!で、とくに鳥羽伏見から五稜郭まで早いのなんの。ストーリーを全部カバーしたいけど時間は足りぬし…制作側の苦労が偲ばれます。エピソードどれかに重点を置いてじっくり話を広げて欲しかったなーと思ったけど、「アダプテーション」見て以来脚本家に同情的なので、これはこれで良いと思いマス。

・今の新選組!が「シティボーイズ新選組」なら、こっちは「お昼・愛の新選組劇場」かなぁ…。女性とのシーンのBGMがまさにメロドラマだし。なんか不思議な気分になります。

・歳三に絡む女たち:岡田奈々、万田久子、小川知子。時代を感じますねー。最近見ない人たちだ。(万田久子はカナフレックスという会社のCMで見る。なんだか良くわからないコンセプトなんだけど、多分社長の趣味で万田久子が歴史上の人物のコスプレをして、必ずトンネルをくぐるという非常に印象深いCMです。今は竜馬編だったかな。来年は義経かも。サンプロ見てると出てきます)

・この沖田は、たぶんこのカツラじゃなかったら男前だと思うのですが、うーんいま一つだったかな。明るい感じは良かったけど。対照的に現・土方の山本君は、一生時代劇のままでいて欲しいぐらい似合ってる。むつかしいですね。

・「洗っても洗っても血が落ちねぇ」近藤に、「優しさを無理に押し殺して鬼になっている」土方。ひゃーちょっとそのセリフ気恥ずかしいんですけど。いやしかし脚本家ががんばって書いたセリフだ評価せねば。うう。

・「祭りの喧嘩」という言葉が良く出てきて、モチーフになっているようです。まぁそれも一理あるかなとは思うけど(原作でも丁寧に説明されてるし)、それだけが土方たちの根幹ではあるまい。男臭くはあるけれど。

・沖田の土方に向ける目線(ex.「土方さんは可愛いなぁ」)は、原作者の愛がこもったものなので(多分)、もうちょっとその辺を掘り下げて欲しかったなぁ。ってどうやったらいいのかわかんないけどさ。
ああッ!そんなにサクサクと〜!てなシーンがいっぱいありました。もったいない。私の勝手な思い入れのせいですね。

・芹沢が吟。前田吟。これが意外と良かった。さすがだ吟。伊東が近藤正臣。近藤正臣は近藤正臣なので、コメントしようがありません。

・この新選組ワールドのメンバーは、バランスがとても良くとれていると思います。ちぐはぐな感じがしなかったので。とにかく男だ、飛び出せ男!な話でした。テーマソングは宇崎竜童だしね。汗がじわー。
しかし土方さんはお母さんみたいだったな。叱咤激励するお母さん。

・私が生きているうちに、きっともう一度ぐらいリメイクされるだろうから、それも楽しみにしてよっと。
●12人の優しい日本人(1991)

〈あらすじは決で〉
もし日本の裁判が陪審制だったら。ある事件のため集められたのは、てんでまとまりがない12人。議論はあらぬ方向に白熱、やがて意外な仮定が飛び出す。犯人は有罪か無罪か?

【ネタばれあり】

・うまいこと作った話だなあと思うのだ。三谷幸喜のお家芸。

・たぶん陪審制があったとしても(これから三審制が始まりますが)、こんな風にはならないとは思うけど、「あるトピックの元で議論するグループ」の描写はとても身近で、なかには、いるよーこんなヤツ…とつい憎んでしまうほど秀逸なキャラクターも。しかし結局は憎みきれない人たちで、まさに三谷氏の分身であろう。(注:三谷さんが憎いわけではありません)

・ジンジャーエール。んーそうかな?ジンジャーエール、じんじゃあええる…。神社会える?関係ない。

・豊川悦司って、この映画ではあまりぱっとしませんね。今となっては、雰囲気のある中堅俳優ですが。なんか意外だった。ここにはあまり嵌ってないような、浮いてるような沈んでるような?

・「日本一の追い詰められ役者」相島さんは、これ以上ないくらい隅っこに追い詰められて自爆。しかも若いから、激しく追い詰められている様子がなんともおかしい。

・現実的な設定を借りたファンタジー。腹を抱えて笑うのではなく、持続するクスクス笑いが楽しめます。そんでもって笑いだけじゃなくて、ちょっとしんみりさせるエピソードとかもあるんだよね。そこのところは私はちょっと…むにゃむにゃ。あくまでも笑いのなかでしんみり感も味わいたいのであります。なんかよくわかんないけど。

・だよーんのおじさん。私はよくバカボンのパパを描きます。落ち着きます。

椿三十郎

2004年3月6日 日本もの
●椿三十郎(1962)

〈鞘におさまらぬあらすじ〉
大目付の画策によって、濡れ衣を着せられ監禁されている城代を救出せんとする血気盛んな若侍たち。そこへひょっこり放浪の侍・椿三十郎(三船敏郎)が現れ、彼らを助太刀することに。三十郎の豪快かつ大胆な作戦とは?

・黒澤監督はあまりに有名だが、実は作品を見たことがないという人は多いんじゃないでしょうか。私もその一人。理由としては、昔の作品だし、白黒で見にくいし、知らない俳優さんばっかりだし…それにゲージュツ作品は敷居が高いし。というわけで、敬遠してたんだけど昨今の時代劇(マイ)ブームのおかげで、ふと見る気になった。しかし数ある中でなぜこれかというと

・あるテレビ番組の映画特集を見てたらこの作品が取り上げられていて、バックにタウンページのCMの音楽(水商売の方々が会社に乗り込んでくるやつ)がかかっていたもんだから、なんか関係あるのかなぁと。私はあのCMが大層気に入っているので、ヨシ、マイファーストクロサワは「椿三十郎」に決め!ということで見てみたら

・面白い!

・えーっ、面白いじゃないの〜。
確かに最初は入りにくい。状況をいきなり説明し出すんだけど、この若者の言ってることが聞き取りにくい。誰だアンタは、と思ったら若大将だ。わか!そしたら横には青大将まで。なんだー昔は田中邦衛も普通の演技をしてたのね(でもちょっと現在の片鱗は見える)。

・と、そんな『逆・あの人は今』も楽しいんですが、それよりもやはりストーリーが面白い。話自体は単純で、味付けもシンプルだけど美味しいんだなぁ。敵と味方の内情を見せながらの頭脳合戦。登場人物の巧さ、細かい設定が楽しい。おそ松くんみたいな若侍たちや空気が読めない奥方たち、そして押入の人(小林圭樹)がもう…ニクイね〜。

・最近だったら、コミカルなシーンとコミカルなBGMはセットになっていて、ご親切にもここは笑うところだよ、と教えてくれる演出が多いけど、そんなことしなくても面白いシーンには自然と笑えてしまうんですね。

・三船敏郎は演技をしているというよりも、ほんとにそこにいた人みたいだ。世界のミフネ、さすが。やっぱり和服は顔が大きくてがっちりしてる人じゃないと見栄えがしないねぇ。

・目が慣れてしまうと白黒もいいかも。椿の色が見える気がするから不思議。

・そのまま大団円、シェーンカムバーックになるのかな?と思ったら。ううむ。

・三十郎の苦い心境と、今後の彼の成り行きを期待させるラスト。ここまで痛快娯楽劇で来て、この終わり方。粋ですなぁ。

・期待した以上に楽しかったので、またどれか見てみようっと。そうだ、この映画には「用心棒」という前作があるんだそうです。

・蛇足。結局例の音楽は劇中流れなかったような。微妙に似てたけど。しかし黒澤を見るきっかけがタウンページとは、我ながら驚き。

沖田総司

2004年2月15日 日本もの
時代劇チャンネルで新撰組祭りをやっていたので、つい見てしまいました。

●沖田総司(1974)

〈粗すぎるあらすじ〉
沖田総司(草刈正雄)が新撰組で活躍し、京娘(真野響子)にほのかな恋心を抱きつつもひき裂かれ、病没するまでを描く青春ドラマ。

・エライもんを見てしまった。「沖田総司」。なんて分かりやすいタイトルなんでしょう。これは「草刈正雄」でも良かったんじゃないかと思うほど、正雄バクハツです。

・しょっぱなから、草刈さんがなにやら叫びながら走ってくる。青春真っ盛りー!この沖田は等身大の草刈正雄。ものすごく自然です。いや、正雄さんがですよ。なんで人気者の彼を、わざわざ時代劇の主役にしたのか謎ですが(ロン毛マジックをかけたかったのか)、とにかく当時草刈ファンはうっとりしたんだろうなぁと思いました。今見てもかっこいいもん。声がものすごく素敵。伊藤英明君に似てる。というより、彼が草刈さんに似てる。

・なんの野心も持たずひたすら土方・近藤についていく無邪気な沖田。キャラクター造形は、ほとんど「燃えよ剣」と一緒のようです。当時から司馬遼太郎氏の影響が濃かったのでしょうか。

・真野響子かわいいなぁ。こういう雰囲気のギャル(!)は、今あんまり見かけませんねー。池波志乃は昔からあのままのようだ。彫り物しておそば配ってそうだ(←そういう役柄を鬼平でやっていた)。

・しかしBGMがよくわからん。シリアスシーンでも呑気そうな音楽なのはなんでだろう。

・あっ、こんなところに西田敏行。

・試衛館があまりにもボロいのがおかしかったです。あれだけ貧乏所帯だったらそりゃ渡りに船で京都に行くわ。大河ドラマは「シティ派新撰組」で、ほんのりライムの香りが漂っているイメージなのですが、この映画では男所帯のむさ苦しさが感じられ、妙に納得しました。

・セブンティーズ青春時代劇です。懐かし〜気分になります。

御法度

2004年1月23日 日本もの
● 御法度(1999)

〈禁断のあらすじ〉
新撰組に入隊した美貌の剣士・惣三郎(松田龍平)と、衆道家(?)田代(浅野忠信)。惣三郎を巡って争奪戦が始まり、おぼこかった惣三郎も徐々に魔性の男に変化していく。見かねた土方(たけし)は監察の山崎(トミーズ雅)に惣三郎に女遊びを教えるように指示するが、らちがあかない。どころか、山崎まで惑わされそうになる始末。惣三郎に言い寄っていた隊士が闇討ちされ、田代に嫌疑がかかる。局長は、惣三郎に田代を討つように命ずるが…。司馬遼太郎原作。

・これは原作を読んでました。原作のイメージとしては、「ストップ!ひばりくん」です。そんなこと言う人いないかもしれないけど(笑)。山崎と惣三郎の下りなんか特にそこはかとないおかしみがあります。それで、映画ですが、

・話の内容はけっこう原作に忠実です。セリフもそうだけど、細かい描写まで。たとえば土方が口を濯いだ、とか近藤の口に笑みが浮かんだとか、そういうのまで拾ってるのが面白い。大意を掴んで脚色してるんじゃなくて、そのままストレートに映像にしましたって感じ。

・なのに、やっぱり人のイメージというのは一人一人違うものですねぇ。そうかー、大島監督にはこう見えるんだーという点で感心。キャスティングが妙。全員目が死んでる(笑)。一見元気そうに見える武田真治も実はどこ見てるかわからない。こんな人たちばっかりよく集めてきたなぁとさらに感心。

・この話はとにかく惣三郎の存在感にかかっているのですが、松田龍平君はその点クリアしてると思います。垂涎の的になるほどの美貌かどうかは置いといて、あんたいったいなに?感は十分に漂わせているのでOKです。デビュー当時の吉川晃司に似てる。それって美貌?

・剣術シーンは別として、皆さんに躍動感がない。操り人形のようだ。色味もほとんどない。なかなか面白いです。怪しい世界の住人を自然すぎるほど表しているのが浅野君。これは上手いっていうのでしょうか。

・パラレルワールド新撰組の雰囲気が楽しい。

・ラストの惣三郎が沖田に懸想、というのにはなるほどーと思いました。大島監督の空想が膨らんだ所なんでしょうか。私はちょっとそれは余計かなと思ったけど、サスペンス効果を上げるためかな?

・雅とかざこばとか。どうせなら南光さんとか、中田ボタンとかも出して欲しかった(笑)。

・惣三郎、「壬生義士伝」の中に入れて見たいなぁ。

壬生義士伝

2004年1月22日 日本もの
年末以来幕末づいているので、新撰組モノを見てみました。

●壬生義士伝(2003)

〈人情派あらすじ〉
新撰組の考試を難なくパスした南部藩士・吉村貫一郎(中井貴一)は凄腕なのに他の隊士に嘲笑されるほどの吝嗇家。その理由のすべては故郷に残した家族を守るため。同隊の斉藤一(佐藤浩一)は彼を苦々しく思いつつ、一目を置く。やがて時勢は急転し、鳥羽伏見の戦いで幕軍は追いつめられ、吉村は郷里の家族を思いながら、壮絶な死を遂げる…。浅田次郎原作。

・これは原作を先に読まずに見た。なので、比べる楽しみがないのですが、単独で見ても良かったです。何が良かったかというと、

・まず、話の冒頭から、タイトル、キャストの名前が出るまでがすごくかっこいい。屋敷を上からずーっと撮り下がってきて(なんか専門的な言い方があるんだろうけど、知らないので)、武士達の打ち合いシーン、中井貴一のバックの濃い緑の山、新撰組の映える衣装、緊張感を高めるナイスBGM。あの、貴一さんの横顔に、中井貴一と入るクレジットの位置が良いです、細かいけど(笑)。壇上で斜に構える佐藤浩一がかっこいい〜。

・中井貴一も上手いなぁと改めて感心した。今まで、意識したことがなかったけど。どうも、私のイメージでは、いつまでも肩にオウムを乗せている印象があったのですが、今回それも払拭されました。ただ線が細いのがちょっと残念。

・そんなわけで物語の最初にミーハースイッチが入ってしまったので、役者にばかり目が行ってしまった。だけどキャスティングが良いので仕方があるまい。塩見近藤と堺沖田はいいですね〜。得体の知れない感が漂いまくり。この二人の間では土方さんはさぞ苦労しただろう。伊東もいい味出してるし、殺伐新撰組の中の「いい人」吉村がうまく際立ってます。それにしても喀血して笑う沖田総司。コワオカシイ。この方、大河では山南さんですよね。自分の役に切られるのかな?

・吉村サイドの話も良かったですよ、景色は美しいし、家族愛も暖かく描かれているし。しかし丸美屋さんとチビノリダーの登場によって、感動のスイッチを押し損なったようです。どうにも三宅裕司が出てくると、リアリティがそぎ落とされていって、だんだん可笑しくなって来てしまった。

・いったん話に乗れなくなると、あとは単に物語を追うだけになってしまう。家族に辛い思いをさせることを承知で脱藩し、新撰組に入隊する経緯、海よりも深い夫婦愛、親子の絆などウルウルポイントがいっぱいなのに。最初でワクワクしすぎた。反省。

・後半最大の見せ場、吉村が心情を吐露して、果てて行くシーン。まるで、歌舞伎のように泣かせる所です。もし、違うときに見て、ここに至るまでに気持ちが盛り上がっていれば、大いに泣けたであろう。しかし、今回図らずも(長いなー)と思ってしまいました。あれだけ家族に思い入れがあって、いわばそのために殉死する役柄だから、そりゃ語り出したら止まらないであろう。すごくわかるけど、三宅裕司のおにぎりでなんだかツボにはまってしまい、ええい、早くせい!と思ってしまいました。罪悪感。

・ミーハー心と仏心は両立しないのか。今度見るときは、正しい気持ちで見よう。

・話の感想としては、度を超した家族愛は、時には彼ら自身を苦しめることになるのではないかと思った。幸福な時は良いけれど、困窮の極みにあって互いに思いやり、かばいあい、遠慮しあい…の状態が続くとさらに苦しい局面に導くことになるかも。この話みたいに親の愛情が深すぎると、それを受ける子供も大変だなぁと思う。

・切ないお話でした。いやほんとに。原作も読みます。
実家に帰ってきました。せっかく色々プランを立ててたのに、風邪ひいた。クリスマスは苦しみマスのだー。ああ、ヒドイ目に合ってしまった。
もうこのままいつもどおり、だらだら正月に突入するのだろうなぁ。
ラストサムライも見に行くつもりだったのにー。
つくづく病気はつまらん。来年は健康に留意しよう。

●千と千尋の神隠し(2001)

〈サクッとあらすじ〉
引っ越し先に向かう途中で立ち寄った古いテーマパークで、千尋は別世界に迷い込む。そこは神様の温泉宿だった。両親を豚に変えられた千尋は、謎の青年の助けも借りて、なんとかしようと奮闘する。

・さすがアニメは色がきれい。赤みがかった温かい色合いで、和む。

・ので、誤魔化されるけど、割とゲロい描写あり。ゲロゲロゴボゴボ。あんまり考えないようにしよう。キャラクターの造形もリアルだったら気持ち悪そうだ。

・色んなものがオブラートに包まれているのに、文明社会への批判はダイレクトに出てて、やっぱりそこが言いたかったのかなぁ。宮崎版ゲゲゲの鬼太郎なのでしょうか。

・少女の成長物語とか言われていたけど、千尋って最初からしっかりした良い子じゃん。何がポイントなのか、私にははっきりわからなかった。感受性不足かな…。なにか深いものを含んでいると思うからいけないのかも。
かわいらしい話とも言い切れないし、そうか、この座りの悪いモゾモゾ感が制作者の意図なのかも。

・湯婆婆、顔でかい。

・夜汽車を待つ駅のシーンは好きです。この心細くなるような、だけど立ち去りがたいような情景には見覚えがあるぞ。

ということで。

●銀河鉄道の夜(1985)

〈ちょっとあらすじ〉
家計を助けるために働く少年(この場合猫)ジョバンニは、お祭りの夜、突如現れた不思議な列車に乗り、銀河を巡る旅に出る。そこには親友・カンパネルラもいた。次々と現れる見たこともない情景に驚くジョバンニ。そして旅の終わりに彼が知った事実とは…。宮沢賢治原作。

・「千と千尋〜」の夜汽車のシーンを見て、この映画のことを思い出したのです。私の心のアニメ。よく友達と『ラッコの毛皮が来るよ〜』とか言って遊んだものだ(懐)。『なんだ、これはお菓子だ』とか。

・ますむらひろしさんの猫の絵と、細野さんの音楽が絶妙。この話は夜のシーンばっかりなので、バックは暗いんだけど、ぽつぽつ現れる電柱の明かりとか、お祭り広場の鮮やかさ、さぎが雪のように舞い落ちるシーンとかがかえって引き立ってます。

・ファンタジーオンチの私がなんでこの映画が好きなのかと考えると、「死」が非情に崇高に美しく描かれているからかも。宗教的な側面もあるけれど、それとは別に去っていくものの辛さや、魂の行く先などについて想像してしまいます。

・「死」はどんなにがんばっても、逃れることが出来ない。それを受け入れて、生きていくしかないという当たり前すぎる現実に気付かされたのが気に入ったポイント。

・とは言っても、やっぱりアニメは絵が命。なにはともあれ猫のキャラクターが好きなのだった。学校の先生はスミレ博士だし。アタゴオルのアニメが見たいなぁ…。
なんで猫やねん、と思った方には面白くなかったでしょうね。