●ザ・ミッション 非情の掟
The Mission鎗火(2000)

〈仁義のあらすじ〉
命を狙われた裏社会のドン。ボディガードに召還された凄腕男5人衆。静かで激しいプロ同士の戦いが始まった。

・カッコイイー。ひゃーかっこいいー!うわーカッコ(永遠に続く)

・香港映画に共通する腹の底から熱いものがこみ上げてくる感覚、たとえノワールだのスタイリッシュだの枕詞をつけても、良い意味での生臭さ、泥臭さが本能にびしばし伝わってくる。それが心地良い興奮に繋がるのですね。

・全編通して殆どセリフなし。銃撃シーンにも妙な静寂と間が漂い臨場感を出す。登場人物についての情報も乏しいが、なぜか最後には親しみすら抱いているという……うーん上手いねこりゃ、まいったよ。

・アンソニーやらフランシスという名前からは、どうしてもフリルのブラウス…薔薇の花びら…貴族の狐狩りとかまったりしたものを連想してしまうのでが、それが男気120%を演じるいかつい俳優の名だと思うと、背筋がシャンと伸びる思いです。でも瞳は澄んでいるので、あながち遠くもないかも……フリルから。

・姐さんが目の前で撃たれて『ええっウソ!』みたいな顔を、けれどあまり表情を崩さずにしてたのが上手い。あのいつもピーナツ食べてた人。

・ところで、
行きつけの美容院のオーナーが、アンソニー・ウォン扮する美容師兼殺し屋にそっくり。
今度会ったら上目遣いで見てしまうかも……。

・あのテーマ音楽、なんてキャッチー。三日は頭から抜けません。パーパーパパーパパパパパー♪
●ピアノを弾く大統領
The Romantic President(2002)

〈あらすじ慕情〉
趣味はピアノのいなせな韓国大統領の娘は問題児。その担任になった女教師も手を焼くが、やがて心が通い合い、父である大統領とも良い雰囲気に……。

・いつかどこかで観たような話を組み合わせたような印象ですが、そして恐ろしく強引なストーリー展開ですが、悪くないです。んなわけねー、で片づけるにはもったいないし、ま、ファンタジーだと思えば。

・女教師(チェ・ジウ)の性格が今ひとつよくわからないんだけど、ミーハーなのか保守的なのか。彼女のルームメイトの設定も必要あったのか疑問だし。
しかし何より気になるのは、大統領はいつ仕事してるんだ?ということでしょうか。
こういう話って、意外と日本では作ろうとしないね。国のリーダーが登場するのは政治的危機の場合ばかり。(そういえば以前三谷さんのドラマでコメディっぽいのがあったっけ。正和主演で)
政治家に夢を見るのも嫌というほど現実が疲弊してるのか……。

・しかしどこの国でもSPって大変だ。

・この映画での収穫は、初めて韓国のシブイ中年男性俳優を見たことです。
トックおじさんとか、チョンウォンのパパとかサンドゥ親分とかサンヒョクのパパとか、(ある意味シブイが)おじさま俳優と言えば個性派(?)しか知らなかったもんだからさ。

月夜の願い

2004年10月21日 アジアもの
●月夜の願い
新難兄難弟(1993)

〈あらすじビーム〉
ナンパなユン(トニー・レオン)は、杓子定規な父親と反りが合わない。昔の父親の姿を見たくなり、願いが叶うという穴に落ちたユンが着いたところは、フィフティーズ香港!

・香港版バックトゥザフューチャーらしいです。確かに。だけどキテレツな博士も未来型タイムマシーンも出てこない。主人公は穴ボコに落ちてタイムスリップ。うーん、こういう地味なのいいですね。
全体的にファンタジーな作りで、ほのぼの感が漂ってる。

・香港の50年代ってまったく想像がつかなかったのですが、案外日本ぽいなぁ。アメリカ文化の大流入と同時に、昔ながらの庶民生活という。まあ一つの側面に過ぎないと思いますが、長屋の生活はなんだか寅さんものを見てるような人情味。

・香港映画と言えば「緊迫」「メリハリアクション」「斬新な映像」「どんでん返し、さらに大どんでん返し!」「ハト」「二丁拳銃」(この辺ウー監督)などのイメージがあって、その上そういう話がよく話題に上るから、たまにこういうのを見るとなんだか新鮮です。

・レオン・カーファイがいいなぁ。実直で器用じゃなさそうなところが。素でいい人そう。
トニー・レオンにはやっぱりちょっとぐらい痛い目に合って欲しいですね。普通にコメディでもいいんですが、この人はどつかれたり刺されたり撃たれたり、または頭を抱えて悩んだりすると、がぜん輝きを増すのですが(そんなことないですか)。
八の字眉毛キャラが上手い。

・もっと香港事情に通じてたら、細々とした遊びなんかも楽しめたんだろうなぁと思うとちょいと残念です。日本にもこういう映画あるのかな?
(ドラマの「トキオ」は今ヒトツだったなーそういえば)

・ラストシーンは、なかなか良いですね。こういうドタバタっぽいオチは、この映画にぴったり。雰囲気が最後まで壊れない、なかなかオツな話でした。
おやつ向き。甘すぎないエッグタルト。
しんみりした映画はあとでじわじわ効いてくる。
昨日の映画は、今のメロウな気分にあまりそぐわなかったようです。
ということで、どろどろ系にチャレンジ。

●蒼き獣たち
五虎将之決裂・The Tigers(1991)

〈あらすじズラー〉
ふとしたことから、犯罪組織の金を横領した刑事たち。それぞれの理由でそれを正当化するが、仲間の一人が殺されたことをきっかけに、彼らは引き返せない暗黒の運命に引きずり込まれていく。

・なんだこりゃ!

・これはスゴイ。香港映画好きの友人に教えてもらったこの映画、調べてみると当時の香港スターの競演がよびものだったみたいです。香港ビギナーの私が知ってるのは、アンディとトニーぐらいなので、ディテイルは良くわからなかったのですが…いやでもすごかった。

・なにがすごいか。いったいどういうトーンの話なのかよくわからない。冒頭から中盤にかけて、わりと軽いタッチで、トニーとアンディの掛け合いなんかがコミカルだったりして、なるほどそういう展開か…と思いきや、途中からいきなり漬け物石を乗せられたようにどん!と重くなるのだった。

・というか、成り行きで金を着服するトニーとアンディがすごすぎる(笑)。巻き込まれた人がお気の毒…と思いきや、これまた意外な展開。あんだけ迷惑かけられたのに、誰もアンディを責めないのよね、だって明らかにアンディが悪いのに〜。なんでや〜。香港型友情の定番?

・いきなり死ぬトニー。(あれってズラ?頭落ちそうだったんですけど)おいおい泣くアンディ。つっこむ私。

・最初にもうちょっと刑事たちの立場とかを説明しておいて欲しかった。そしたら感情移入もできたかも。

・終盤に向けて漬け物石はどんどん重くなる。拷問のようだ。

・敵役とのアクションシーン。これはすごい!こっちは三人で手斧、日本刀(?)、拳銃を持って戦ってるのに、丸腰の相手に振り回される。どんだけ強いねん。ズボンが脱げて走る敵。もうなんのために戦ってるのかよく理由がわからないけど、アンディはマジだった。最初とは別人。もしかして別の話なのかも。

・情け容赦なく撃たれる敵、飛び散りまくる血しぶき、そして「責任はおれが取る」…ってアナタ。最後の最後まで衝撃的。一応は一貫しているのか。

・まいりました。やはり香港映画はすごいです。

・スター映画だからそれぞれの見せ場があるのはお約束ですが、よくわからないヌードシーンとかも用意されているあたり、サービス精神の徹底ぶりがうかがえます。

・どういうリアクションをとったらいいのか、中腰のままで見終わったような。いい感じです(笑)。

・蒼き獣で五匹の虎だもんね。作ってる間に勢い余ってこうなった、というような話でした。
香港映画を見るのなら、これを避けては通れまい…。ということで、

●男たちの挽歌
英雄本色 A Better Tommorrow(1986)

〈あらすじ二丁拳銃〉
ホーとマークは裏社会でのし上がることを誓った親友同士。仕事も順調だったが、ホーは弟・キットの将来を思い、足を洗うことを決意。だが最後の仕事で罠に嵌められて逮捕、父親までもが殺される。刑事になったキットは兄を恨み、マフィアの検挙に執念を燃やす。そして3年が過ぎ、かたぎになったホーはマークに会う…。

・んー。熱い!これは熱湯の熱さじゃなくて、サウナの暑さだ。全員からなにやら濃いー湯気が上がっているような。見終わった後、ひとっ風呂浴びたような気になりましたよ。

・これが世に言う香港ノワールの始まりですか。なるほどー。この映画で香港映画の流れがガラッと変わったとか。確かに過渡期に作られたという感じはする。銃なんて情け容赦なく撃ちまくってスタイリッシュな映像ですが、素手になるといかにもカンフーの動きなのが、やはり20年前だなという感じです。普通にじゃれてるときも(男同士のじゃれ合いが多い。これも香港映画の特徴か)、相手を殴るときもなんか基本の構えがカンフーなんですよね。インファナル・アフェアではカンフー色がほとんど無かったことを思うと、時は流れたという印象。

・そんでもって、普通の動きもスゴイ機敏なんですけど。やはりカンフーアクションの名残だろうか。そして、皆さんタフ。撃たれても、刺されても蘇りが早!

・チョウ・ユンファは、登場した時顔面の半分以上がサングラスなため、どんないかつい顔かと思っていたが、割と優しい顔立ちですね。しかし、ボコボコにされて鼻血を出したときの顔が高見盛だったぞ。コワイじゃないか。

・ウー監督みたいにやりたいことがはっきりしてたら、見てる方も非常にわかりやすい。この場面他でも見た…と思っても、だってそれはジョン・ウーだからと納得させる熱いパワー。私もまた別の、鳩と二丁拳銃と教会の話が見たくなりました。

・しかし香港の人は感情表現が豊かですね。あれは映画だからオーバーアクトしてるんでしょうか。キットの恋人なんか、めちゃめちゃ激しいなぁ。あれ、そういえば女の人は一人しか出てこなかった。さすが男だらけのノワール…。

・レスリーが出てたのは知らなかった。若いなー…と言ってもこの方はいつ見ても若いんですけど。私はレスリー・チャンの動きがぴょこぴょこしてるところがけっこう好きです。

・聞くところによると、当時この映画に嵌ったあまりに広東語をマスターしてしまった人もいるとか。それほどインパクトが強かったんですね。私もリアルタイムで見てみたかったなぁ…と一瞬思ったけど、きっとその頃の私には興味がなかったのだと思われる。映画を見るのはタイミングですねぇ。

星月童話

2004年2月2日 アジアもの
おお、新しい〜。カスタマイズしなければ…。いつか。

先日、日韓共同ドラマをちょっとだけ見て、関係ないけどレスリーと常磐貴子の映画を思い出した。

●もういちど逢いたくて
星月童話(1999)

〈あらすじA・旅愁編〉
結婚間近で幸福の絶頂にいたヒトミ(常磐貴子)は、不慮の事故でフィアンセ(レスリー・チャン)を失い茫然自失に。彼女は新婚生活を送るはずだった香港で、一人暮らしを始める。そんなとき、偶然フィアンセそっくりの香港人・カーボウ(レスリー二役)と出会う。カーボウに彼の面影を重ねてしまうヒトミだったが、彼の側にいるうちにいつの間にか事件に巻き込まれて行き…。

〈あらすじB・アンダーカバー編〉
優秀な潜入捜査官カーボウは、恋人の自殺という過去を引きずりながら生きていた。捜査中、罠に嵌められそうになった彼は、偶然知り合ったヒトミのおかげで急場をしのぐ。その後、ヒトミの事情を知ったカーボウは、彼女の真摯な気持ちを受けとめるようになる。しかし、危険が彼らに迫っていた。

・これ、面白いんです。といっても、ちょっと種類の違う面白さなんですが。

・まず、話が大作り。日本側と香港側の話をのりでぺたっと張りました、という感じ。レスリーと常盤さんのシーンの空気が全然違う。最初の話運びが強引。
とにかく、主人公を香港へ行かせなければ!という。いっそ無駄のない作りでわかりやすいですが。

・そんで事故のシーン。とんでもなく車が転げ回って、しかもスローモーションだ。西部警察?
なんでそんなに迫力を出すのだ。リアリティ?香港映画味?よく生きてたなーヒトミ…。

・常磐さんと絡まないレスリーの出番は、これまた別の映画かと思うほどハードボイルドタッチ。その路線の話も見てみたい思ったわ。

・死んだ恋人とうり二つ、っていうのは古来愛され続ける設定ですね。でもこれを使うと話の信憑性が低くなるため、それ以上に普通ではありえないエピソードを連発しなければならぬ。その点このドラマは、『ありふれた日本人女性が→思い出の地で恋人そっくりな男と会う→しかもその男は危険な職業で→二人は命を狙われる』という、ハーレクインチックな微妙な設定で攻めてくるので妥当だと思われる(えらそう)。
もしこれが、『男の昔の恋人もなぜか常盤さんそっくりで→二人に愛の嵐が吹き荒れるが→実は常盤さんは敵の刺客だった』とかだったら…。
あら、普通のアクションものじゃないの。

・でもそれじゃ話がすっきりしちゃうんだよねぇ。私はこの映画のちぐはぐ感が気に入ってます。なんかこう、下りのエスカレーターになかなか足を踏み出せない感じというか。

・こういう痛みを抱えた二人だから、まぁそういうこともあるのかなぁと理解しようと思えば出来ないこともない展開が小賢しくてズルイ。

・きっと主役の二人に制約が多くて、こういう作りにならざるを得なかったんだろう(想像)。とにかく、レスリーはシブく、常盤さんはけなげに(一歩間違ったらヤバいけど)描かれてるから良いのではないでしょうか。

・なんたって童話ですからねぇ。うまいタイトルだ。
甦った。良かった。

● ブエノスアイレス
春光乍洩 Happy Together(1997)

〈タンゴなあらすじ〉
香港からはるばるアルゼンチンに流れてきた男カップル。A(トニー・レオン)は自由奔放なB(レスリー・チャン)に振り回されっぱなし。微妙な感情な動きで、ラブラブになったりののしりあったり、お互いにくたびれ果てている。その後Aは純朴な青年に出会い、このラブ無間道からの脱出を試みアルゼンチンを離れ、Bは一人残される。ズンチャッチャ。

・アルゼンチンかー。あそこは母を訪ねていくところなのに、時代は変わった。

・また王家衛監督なのだ。私ってチャレンジャー。色々思うに、こういう作品は話がどうとかじゃなくて、心の目で見ろ!行間を読め!ってことなんだろうなぁ。話の全体を包み込む雰囲気を楽しむものなんだろうなぁ。だから考えちゃいけないんだ、感じるんだ感じるんだ…。

・と、言い聞かせて見ましたよ。だけど、そうやってることがすでに失敗なのね。いや、私だってそんな野暮な人間じゃないつもりだから、切っても切れない愛情の辛さとか、ふとしたことに切なくなる気持ちとかはくみ取れますが(ほんまかいな)、それが自分の懐にずしっ!とはこなかった。

・なんかよくわからんなー。と言うのは、なんかちとクヤシイのである(笑)。

・結末もよくわからん。なんで、ラストはあんなにさっぱりした顔してんの?アルゼンチンに残った恋人のことはもういいの?屋台がうまかったの?うーん。なぜだー。

・そもそもストーリーがある、と思うのがよくないのかも。場面場面で何か印象づけようとしてるのかな。印象に残ってるシーン…。うーん、中華料理作ってるとこか。

・面白いと思ったのは、地球の裏側に行っても、中華料理を作り、中華料理店で働いていることです。どこにいても中国人は自分を見失わない人たちなんだなと感心した。でも監督はそんなとこを見て欲しかったわけではなさそうだ。

・そうか。私って自分がどう見るというより、どう見て欲しいのかにこだわっている気がする。だから、ストレートに感想がでないのかも。これって変だな、我ながら。だから自分の意見に自信がないのかー。いかんいかん。

・というわけで、思ったことをはっきり書きます。
面白くありませんでした。むー。でも、なんで面白くないのかが気になる映画ではあります。

・あと気になった点。ラストにトニーが着てたセーターが、昔ビートたけしがよく着てたような、よくわからん柄物だったのがちょっとコケた。

大英雄

2004年1月8日 アジアもの
そして楽園の瑕の双子といえばコレ。

●大英雄(1993)
シャチョウ英雄傳之東成西就

〈アホアホあらすじ〉
とある国の王妃が西毒(トニー・レオン)と結託して国を乗っ取ろうと画策することから起こるドタバタ劇。王女(マギー・チャン)やその婚約者、お坊さんなんかを巻き込みアホパワー全開で、最後は大団円。明けましておめでとう!(←正月映画だったらしい)

・ウラ楽園の瑕とも言える話。キャストがほとんど一緒。なんでも、楽園の瑕の撮影が滞っている間にぱぱっと撮っちゃったんだそうです。でも同じ素材を扱っていながら、似てもにつかぬアホコメディ。

・しかもただのアホではないよ。コントの基本みたいに超ベタなのだ。なんの技も使わない、スタンダードなオチで笑わせるまっとうさ。いにしえのスター隠し芸大会みたい。マチャアキが出ててもおかしくないぞ。

・テーマのどこにも愛がない、あるのはしょーもないギャグばかり。ああ、アホアホって素晴らしい〜!
こんなことに真剣に取り組んでいるスタッフ・キャストを思い浮かべると一層楽しめます。

・あんな大スターがこんなことを…っていうのでおかしいのかも知れないね。

・これを見て以来、レオン・カーフェイを見ると心が和みます。ほっこり。

・今時こんな映画はありえないけど(香港でも?)、こういうのが年に一本ぐらい作られても面白いんじゃないかなー。でも日本では内輪受けみたいなので終わっちゃいそうだね。内輪受けがエンターティンメントまで行かずにウケちゃうんだもんね…。

・やっぱりレスリーはきれい。どういうこっちゃ。

・しかしこの二つの作品は、どっちを先を見るかによって役者の印象がぜんぜん変わりそう。

楽園の瑕

2004年1月7日 アジアもの
遅ればせながら謹賀新年です。
遅ればせながら、紅白では布施明と和田アキ子が良かったです。
歌謡曲に郷愁を感じる年代に、猛スピードで突入しつつあります。
もともとノスタルジー好きの私なので仕方ないですが、昭和は遠くなりましたね…(遠い目)。
今年も後ろを向いたり、前を見たりしてモソモソ進んでいこう。

昨年香港映画に好印象を持ったので、何作か見てみました。

●楽園の瑕(1994)
東邪西毒・Ashes of Times

〈叙情派あらすじ〉
昔の話。砂漠の村の外れに、殺し屋の仲介業を営む孤独な男(レスリー・チャン)が住んでいた。後に西毒と呼ばれるこの男は、感情に流されることはない。愛に絶望しているからだ。彼のもとには時々客が訪れる。過去を忘れたい男(レオン・カーフェイ)、盲目の武士(トニー・レオン)、嫉妬に狂う女(ブリジット・リン)…。それぞれの愛が糸のようにお互いに絡みあい、せつなさを生む。嗚呼、あらすじを書くのも難しい、情緒の世界の物語。

・なんでこれを手にとったかというと、映像がきれいそうだったのと、キャストに知った名前が多かったから。それもそのはず、当時のオールキャスト勢揃いなのだそうだ。しかも監督は王家衛。

・ウォン監督と言えば、まえーに「恋する惑星」を劇場で見たっけ。きれいな作品だったけど、カメラがぐらぐらしてて目が回りかけたんだった。

・ほんで話はというと、うーん、ジョジョー的な作品。ラブが交錯する話なのであります。レスリーの前に現れるそれぞれの人物像を美しく描き出している。

・これには原作があって、中国では超ベストセラーの「シャチョウ(←社長ではない)英雄傳」が下敷きになっているそうです。なので、知っていればスイスイと人間関係が頭に入るであろう。だけど、どうもこの話は、人物を借りてるだけで本編とは関係なさそう?

・王家衛のいい意味での思わせぶり演出を楽しむ映画かも。ミーハー的には、美男美女俳優の豪華コスプレカタログを見せて頂いた感じでウレシイ。

・もろにラブなんだよね〜。愛がテーマにどどーんと来るとちょっと無口になる私であった。松阪慶子(!)でないけれど、あれも愛、これも愛ってなわけで、そうかーそういう愛の形もあるんだねフムフムと思うだけの自分の感受性の乏しさが寂しくなってしまうのであります。

・ラブが苦手というのは、不本意なのですが。情緒不足と言われているみたいでさ。
正直な感想を申せば、どう感じていいのか困ってしまったのであった。

・なんで中国でワイヤーアクションが盛んなのか、ちょっと分かったような気がする。この話にはちょっとしか使われてないけど(愛の話だから)、中国のヒーローは宙を自由に舞い、超能力を使っていたんだそうな。それを表現する策が、ワイヤーなんですね多分。必然で生まれた技術なのでは。
日本でもイナバの白ウサギなんかを映像化すれば、ワイヤーでびしばし決めた大スペクタクルロマンが撮れるかも。

・レスリーは美しかったです。